【インタビュー】デジタルスニーカーNFTのエコシステムを構築する|ジョイファ 平手宏志朗
“デジタル上のファッション表現”を目指し創業
──ジョイファの起業の経緯を教えてください。
ブロックチェーン×エネルギーの領域で事業開発を手掛けていた会社を2020年3月に退職した後、Enjin社にてNFT×エンターテインメントの領域で事業立ち上げを担いました。当時はNFTなんて、ほとんど誰も注目していませんでしたね。
ゲームやコレクティブ系など色々なジャンルがありましたが、そのうちの1つがファッションだったんですね。私が直接関わっていたというよりは、同僚が関わっているプロジェクトをサポートしていたのですが、取り組んでいくうちに「あ、これはすごく可能性があるな」と感じるようになりました。
特に当時はコロナ禍の真っ只中でしたから、外に出ずに家の中でファッション体験をする必要性があると思いましたし、それに加えてアパレル業界が苦しい状況の中で、今後デジタル上でファッション表現をしていくことは、今後可能性があるのではないかと思うようになりました。東京にあるファッションの専門学校に通う中で、これは非常に大きなモノになると感じ、2022年5月頃に創業しました。
株式会社ジョイファ 代表取締役 平手 宏志朗(ひらて こうじろう)
米国の大学を卒業後、様々なベンチャー企業にて新規事業の立ち上げに従事。2017年よりブロックチェーン事業に携わり、日本およびシンガポールの企業において、データ管理・証券取引・エネルギー取引といった分野における、ブロックチェーンプロジェクトをリード。2020年4月にNFT ×エンターテイメントのエコシステムを開発しているEnjinにジョインし、同社が発行する仮想通貨の上場や、国内外の企業との事業提携を推進。2021年5月に株式会社ジョイファを創業。
──デジタル上のファッション表現とは、どのようなものでしょうか?
デジタル上のファッションとは、大きく分けて2つあると思っています。
1つはアバター向けです。これはNFT関係なく元々あったものだと思いますが、例えばフォートナイトなどのゲーム空間の中でのアバターに着させるデジタルファッションです。
2つ目は、よりARに近いデジタルファッションです。例えば、自分で写真を撮って、その写真は本物だけれども、服だけデジタルのものを装飾のようにして、デジタルの服を本当に着ているかのように見せるというものです。現実世界50%、デジタル50%というような形も、もう1つあるかなと思っています。
我々がフォーカスしているのは後者でして、メタバースのアバターに着せるようなデジタルファッションというよりは、現実に自分が着ているように体験できる方のデジタルファッションに取り組んでいます。
──そして、最初は日本で創業したのですか?
創業時は様々な日本の会社様と一緒に、デジタルファッションのユースケースを作らせていただきました。そして、今後、どうやってジョイファの事業を展開させていくかと検討した際に、税制の面や暗号資産の規制の面で、日本で事業展開をしていくのは最適ではないと考え、いろんな方と相談させていただいた上で、ドバイで事業展開しようと判断し、2022年2月にドバイに移住して現在に至ります。
──ドバイに移住されたときは、現在の事業を既に立ち上げていたのですか?
小さなピボットは何度か行っており、創業当初とまったく同じビジネスモデルではありませんが、移住時点である程度の事業は立ち上がっておりました。ドバイで作った法人が日本の事業を継承する形で、現在は運営しています。
──ドバイへの移住や生活は大変そうなイメージがあります。
現在正確には、ドバイ郊外の田舎町に住んでおり、日本人がだれもいないので少し寂しいところはあります(笑)。また最近はほぼ毎日40℃は超えていますので、やはり暑いです。ただインフラは整っていますし、治安も良いので、それほど困ってはいないですね。
“StockXのデジタルスニーカー版” ジョイファのビジネスモデル
──ジョイファの事業概要や、ビジネスモデルについて教えてください。
一言で言えば、「StockX(※)のデジタルスニーカー版」です。我々がブランドとなってオリジナルの靴を販売するのと同時に、エコシステムを創っていくことも注力しています。
(※)2016年北米で誕生した、スニーカーやアパレルブランドのリセールに特化したサービス。株式市場と同じように、売り手と買い手で値段を付け合い、売買が成立すれば、専門家による鑑定を経て消費が手元に届くサービス。200以上の国・地域で展開されるグローバルなサービスであり、時価総額は約4,000億円とされている。
具体的にエコシステムとは何かというと、大きく2つの要素がありまして、1つはデジタルなスニーカーを作って売るというものです。
先日、NFTを持っている人は誰でも無料でスニーカーを発行できるツール「freedom」をローンチしまして、そこでスニーカーをカスタマイズしてmint(スマートコントラクトを使って、NFTを新たに作成・発行すること)することが出来る機能を提供していますし、将来的には3Dデザイナーの方が作ったデジタルスニーカーをマーケットプレイスで販売するといった機能も搭載する予定です。
まず自分で作って販売するという体験を提供するというのが、エコシステムの第一歩です。
──ユーザーは、特殊なスキルがなくてもスニーカーを作れるのですか?
はい、作れます。まずジョイファにて真っ白なスニーカーを準備させていただきます。そこで、対応しているプロジェクトのNFT(※)を持っている方が、自分のNFTを選択すると、ジョイファ側が自動的に真っ白なスニーカーにNFTを貼っていき、NFTが貼られたスニーカーをmintさせていただく、という流れです。
(※)リリース当初は、以下の7つのNFTプロジェクトが対象:Azuki、Beanz、World of Women、mfers、Cryptoadz、Chain Runners、Blitmap
──Stock Xのデジタルスニーカー版という説明は分かりやすいですね。スニーカーを好きで履いている人もいれば、価値のある資産としてコレクションしている人もいますね。
おっしゃる通り、デジタルファッションの領域でも、今後コレクション市場が出来上がってくると考えており、ジョイファでは特にスニーカーの領域をやっていきたいです。
──エコシステムの2つ目の要素はどのようなものでしょうか?
2つ目は、スニーカーを体験できる場を創るというものです。
デジタルのアイテムとは言ってもファッションアイテムなので、ただjpgの画像としてあるだけではちょっと足りないという気持ちがあり、実際にARで投影したデジタルスニーカーの写真を撮って、歴史のように記録しておけるようにする等、デジタルスニーカーをファッション体験できるような空間を創ろうと考えています。ARを通した、リアルとデジタルのミックスでのファッション体験を提供する予定です。
──現在、まさに事業立ち上げフェーズかと思いますが、今後のジョイファのビジネスモデルはどういうものになるでしょうか?
最終的には、OpenSea(※)のようなマーケットプレースを志向しています。販売手数料として、販売金額の一部を受け取るイメージです。
(※)月間アクティブユーザー20万人超の、世界最大規模のNFTマーケットプレイス。販売手数料は2.5%と、他のマーケットプレイスと比較して安価であることが特徴。時価総額は、約1.5兆円。
──現在はどのくらいのユーザーがいるのでしょうか?
現在NFTを販売している状況であり、正確な数字は出しづらいところですが、運営しているDiscordは1,000名以上登録いただいています。現状、流通している靴は、合計200足程度ですね。
──今は何名くらいで運営されているのでしょうか?
私も含めてフルタイムが3名、パートタイムで関わってくれている人は10名程度です。私以外はほとんど日本からのリモートワークです。
──フルタイムの方は、どんな役割を担っているのでしょうか?
ブランディングやコミュニケーション担当、3D制作とCEOの私の3名です。
現在のユーザー属性は日本が多いですが、英語圏の海外も増えてきています。
ジョイファの今後の展望
──現在、どのような点に注力されているのでしょうか?
まだ完全ではないですが、スニーカーを作るという機能はリリースしたので、次はスニーカーを楽しんで体験していただけるというサービスを創ることが、大きなマイルストーンになってきます。
現状はスマートフォンの小さい画面からしかデジタルスニーカーは見えませんが、今後ARグラスが普及してきたら、ARグラスを通して見ると感覚が変わると思いますので、それには対応していきたいですね。
現状のARの技術も我々で作っていて、現在はブラウザベースでのAR体験、例えばスマートフォンのブラウザを開いてARで投影するといった技術を開発しています。
過去にはARのアプリを我々自身で開発しており、ほとんどローンチまで進んでいましたが、AppleのNFTに対する規制が非常に厳しく、app storeでのリリースを断念した経緯があります(苦笑)。
──デジタルスニーカーがユーザーにとって価値があると思ってもらえるようなインセンティブの設計は何か考えておられますか?
レア度を設計することも1つだと思いますし、またブランドとのコラボでスニーカーに価値が付いてくるということもあるでしょう。さらに、デジタルスニーカーをARで投影し、写真化することで、ヴィンテージあるいは歴史的価値も付けられるかと思います。「誰がこのデジタルスニーカーを所有していたのか」を明示することで価値が高まるということですね。
──現時点で、脅威に感じる競合はいますか?
もちろんこの領域に張っている会社は、我々だけではございません。ただ、ジョイファのポジショニングはスニーカーのブランドを作っていくのではなく、むしろエコシステムを作っていく側ですので、その意味では競合ともパートナーシップを結べるのではないかと考えています。
──自分でデジタルスニーカーを作ったら、ユーザーはそのスニーカーをリアルでも欲しいと思うようになるのではないかと想像しますが、リアルで届けてくれるような機能を実装する可能性はありますか?
将来的にゼロではありませんが、現時点では考えていません。コスト面での課題に加えて、デジタルの良さとしてリアルではあり得ないようなクリエイティブを生み出せる点がありますが、リアルにすることによってクリエイティブの範囲が狭まってしまうことを避けたいと思っています。そのため、今はデジタルに特化して事業展開を進めていこうと考えています。
── 今後のユーザー体験として、リアルでの位置連動機能についても構想されているのですか?
今後大きく方向性が変わる可能性があるという前提ではありますが、ポケモンGOなどのゲームと同様に、特定の場所、例えばスニーカーショップと提携しその店舗に行ったらスニーカーのNFTがドロップされる等、最終的にはリアルビジネスと結びつけたいと考えています。
──なるほど。プロダクトの構想として、現在はデジタルスニーカーを作ったり売買する体験があって、その次にARを用いて実際に自分が着ていることが楽しめるようになり、将来的にはゲームを通じてリアルとの接点を創っていくということですね。
はい、おっしゃる通りです。
価値あるNFTの創出には、コミュニティの熱量がキーファクター
──ちなみに、BAYC(The Bored Ape Yacht Club)のように非常に高額なNFTが誕生するケースと、そうでないケースが存在していますが、これらの違いは何だと捉えていますか?
BAYCの場合は、コミュニティの盛り上がり、コミュニティの作り方が上手かったのだと思います。それがステータスとなって、BAYCのNFTを持っている人はカッコいい、そのソーシャルコミュニティに入れることに価値を感じるというようになっていったのだと思います。
──ジョイファもまさにコミュニティを構築中ということですね?
はい、もしご関心をお持ちの方は、ぜひまずはジョイファのdiscordに入ってみて欲しいと思います。また、まだ一部のNFTのみの対応となっていますが、Freedomの紹介ページにもアクセスいただけますと幸いです。これからのジョイファにご期待ください。
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