イーサリアム「マージ」の影響と今後の動きをわかりやすく解説
イーサリアムの大型アップデートETH2.0「マージ」の概要
イーサリアムのマージとは、コンセンサスアルゴリズムを移行する大型アップデートのことです。
コンセンサスアルゴリズムとは合意方法のことで、具体的には取引を記録・確定させる際の合意の取り方を指します。
マージでは、そんなコンセンサスアルゴリズムをPoWというものからPoSへと移行していきます。
これから、そんなマージを正しく理解するために、現在のPoW・移行後のPoSの概要と、実装後の各チェーンの立ち位置について解説していきます。
計算力勝負のPoW
PoW(Proof of Work)とは、計算力によってコンセンサス(合意)を取る方法です。
具体的には、難しい計算問題を「一番初めに解いた人・組織(ノード)」に対して、報酬としてETHを支払います。
この計算を行うことをマイニングと呼び、計算をしている人・組織をマイナーと呼びます。
このような背景から、高い計算力を持っているマイナーに対して、報酬が支払われる可能性が高いです。
マイニングが成功すると、ETHを通して高い報酬が支払われることから、仮想通貨の市場が大きくなりつれて、マイナーが増加しました。
マイナー増加などに伴ってマイナー同士の競争が激化し、計算の難易度も上昇しました。
より高い計算力を実現するには大量の電力が必要で、環境問題などへの影響も指摘されつつあり、仮想通貨が問題視される理由の1つでもあります。
保有量勝負のPoS
PoS(Proof of Stake)は、仮想通貨の保有量によってコンセンサスを取る方法です。
具体的には、一定量の仮想通貨をネットワークに預けた人の中から、ランダムに取引を記録・確定させる権限を渡し、対価として報酬を支払います。
預けた仮想通貨の量が多ければ多いほど、取引を記録・確定させる権限を貰える可能性は高まるため、保有量が多いほうが有利になります。
仮想通貨を預けることをステーキングと言い、取引を記録・確定する主体をバリデーターと呼称するのが一般的です。
PoWと比較して高い計算力を必要としないため、エネルギー効率が良いなどさまざまなメリットが見られ、主流なコンセンサスアルゴリズムになりつつあります。
マージによって役割が分担される
イーサリアムにおいて、PoSを実装しているチェーンは既に稼働しており、そのチェーンを「ビーコンチェーン」と言います。
しかし、ビーコンチェーンはまだ、広く利用されるような本格的な稼働をしていません。
一方で、イーサリアムの利用者が主に現在利用しているチェーンを「メインネット」と言います。
マージにおいて、ビーコンチェーンとメインネットが統合されることになりますが、メインネットは上書きされて消えてしまう訳ではありません。
メインネットは、トランザクションの実行などを行う実行レイヤー、ビーコンチェーンはPoSを採用したコンセンサスレイヤーとして稼働することになります。
マージ以前は、メインネットが実行・コンセンサスの双方を担っていましたが、マージ後ではコンセンサス部分とトランザクションの実行部分が分離します。
ETH2.0・マージで何が起こる?ステーキングやエネルギーへの影響
マージの実装後に何が起こるのか?という点が最も気になるところです。
そのため、マージ実装後の変化について「ステーキング・エネルギー・フォーク」という3つのポイントから解説していきます。
ステーキングによる供給量の減少
PoSの採用によって、市場に供給されるETHが大幅に減少すると見られています。
いくつか理由はありますが、インパクトが大きいものに「報酬の減少」と「ステーキングによるETHの固定」という2点が挙げられるでしょう。
現在、PoWを採用するイーサリアムでは1日あたり最大で13,000ETHが報酬として生成されていますが、マージ後ではPoSの1,600ETHのみになります。
これにより、ETHの生成が90%近く削減され、当然ですが市場に供給されるETHも減少します。
(PoSはPoWと比較し、運用に伴う経済的なダメージが少ないため、参加者に対し高い報酬を支払う必要がないため)
また、PoSの参加にはETHのステーキングも必要となり、こちらも市場に供給されるETHが減少する要因になる可能性があるでしょう。
具体的な価格は予測不可能ですが、供給量の減少というのはETHの価格に対してポジティブな影響を与える可能性があります。
エネルギー効率の向上
PoSは膨大な計算力を要求しないため、PoWよりもエネルギー効率が非常に高いです。
このことから、エネルギー効率が向上しイーサリアムが将来的に、より持続可能な仮想通貨となっていく可能性が考えられます。
環境などへの影響から批判されることも少なくないため、将来的にイーサリアムがより普及した場合に備えて必要なステップであると言えるでしょう。
フォークによって他のETHが誕生する可能性も
マージに伴ってフォーク(ネットワークの分岐)が発生し、他のETHが誕生する可能性もあります。
これまで、PoW環境においてマイニングをしていたマイナーは収益を失うことになりますから、マージによるネガティブな影響をダイレクトに受けます。
上記の背景から、海外仮想通貨取引所などがPoWを採用するETHW(ETHPOW)を上場させるなどの動きが見られ、マージ後に何らかの動きがある可能性もあるでしょう。
いつ・何が起こる?2022年以降のイーサリアム
マージは大型のアップデートではあるものの、今後のアップデートの一部に過ぎません。
そのため、2022年以降のイーサリアムの開発・予定について解説していきます。
マージの実装は2022年のQ3から
マージの実装時期は確定されていないものの、2022年のQ3〜Q4で実行される予定となっています。
具体的には、アップデートの開始は9月6日、完了は2022年9月中旬あたりであると見られています。
ただし、これまでマージ(PoSへの移行)は何度も延期されており、何らかの問題が発生し延期が発生する可能性は否めません。
シャードチェーンの実装は2023年から
処理性能の向上などが期待できるシャードチェーンは、2023年のどこかで実装される予定です。
シャードチェーンとは、シャーディングというデータを分割・水平に処理することで、ネットワークの負荷を軽減する技術を実装するアップデートを指します。
実は、マージが実装されても、大幅な処理性能向上・スケーリングの効果は見られません。(若干の変化がある可能性はアリ)
PoSを実装している仮想通貨は、高い処理能力を持っていることが多いですが、イーサリアムにて類似の効果が出てくるのはシャードチェーンが実装されてからになります。
イーサリアムのマージについてまとめ
イーサリアムのマージは、仮想通貨の安定的な稼働に不可欠な「コンセンサス」を移行するアップデートです。
ネットワークのシステムとしてはもちろん、市場への供給・マイナーのエコシステムなどにも大きな影響を与えます。
イーサリアムは仮想通貨において時価総額ランキング第2位の地位を持つ仮想通貨ですから、動向からは目が離せないと言えるでしょう。
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