ステーブルコインのトリレンマとは?概要と裏に潜むリスク
ステーブルコインのトリレンマとは?概要を解説
ステーブルコインンのトリレンマとは、ステーブルコインを構成する要素のうち、同時に実現できない要素のことです。
DeFiやブロックチェーン関連のトピックにおいて、ステーブルコインは主要なトピックの1つになっています。
ステーブルコインは、何らかの資産と価格が連動することを目指した仮想通貨のことです。
多くのステーブルコインは、米ドルと連動することを目指しています。
ただし、主要なステーブルコインにおいて、以下の3つを実現したものは現状存在していません。
- 安定性
- 資本効率
- 分散性
上記は、ステーブルコインにおけるトリレンマと呼ばれており、ステーブルコインの課題の1つです。
一般的に、ステーブルコインを分類する際は「法定通貨担保型・仮想通貨担保型・無担保型」といった種類が知られています。
しかし、トリレンマにおける評価も考慮すると、よりそのステーブルコインが持つリスクや課題を探れます。
ステーブルコインのトリレンマごとの意味と課題
これから、ステーブルコインのトリレンマごとの意味と課題について、以下から解説していきます。
- 安定性
- 資本効率
- 分散性
ステーブルコインの課題をチェックしていきましょう。
安定性
ステーブルコインにおいて、価格における安定性は非常に重要です。
仮想通貨は主要なBTC(ビットコイン)・ETH(イーサリアム)であっても、ボラティリティが大きく、安定的な資産ではありません。
上記のような環境で、ステーブルコインはオンチェーンで安定的な資産を持つ手段になります。
「通常の仮想通貨」と「ステーブルコイン」において、安定性の重要さに大きな違いがある点に留意が必要です。
通常の仮想通貨であれば、ボラティリティがあろうとそれほど問題ありません。
しかし、安定性こそが価値の根源であるステーブルコインにとっては、命取りになります。
ステーブルコインの価格が安定しないペッグ崩壊は、市場に大きな恐怖を与え、大きなニュースとなることが多いです。
アルゴリズムなどを活用した無担保型において、安定性を犠牲にしているケースが見られます。
実際に、アルゴリズムを活用していたUSTというステーブルコインは大規模なペッグ崩壊を起こしています。
資本効率
次に、トリレンマの1つとなるのが、資本効率になります。
資本効率とは、ステーブルコインを発行するに当たって、どの程度の担保が必要になるのか?ということです。
ステーブルコインは、仮に無担保型であっても一定の担保や準備金を用意しているのが一般的です。
これは、緊急の事態に備えたもので、一時的にペッグが崩壊した場合などに備えて、ステーブルコインを買い支えるための資金となります。
備えている担保が増えれば増えるほど安定性は増しがますが、資本効率は低下してしまいます。
ボラティリティの大きい仮想通貨を担保にしているステーブルコインは、こういったトリレンマに遭遇しがちです。
分散性
分散性は、そのステーブルコインがどのような主体や形態によって管理されているのか?というトピックです。
ステーブルコインの発行や管理には、何らかの主体やシステムが必要です。
ステーブルコインには、企業や機関が単一の主体で管理しているものや、スマートコントラクトやDAOを活用して管理しているものがあります。
単一の主体で発行・管理しているステーブルコインには、分散性はありません。
そのため、必ず企業や機関といった単一の主体に対して、信頼性が求められます。
また、単一の主体に対して国・当局による規制が入るリスクも存在しており、分散性を持たないステーブルコインはさまざまなデメリットが見られます。
法定通貨や、それに準じる資産を担保として扱っているステーブルコインに、見られることが多い課題です。
主要ステーブルコインとトリレンマ
これから、主要なステーブルコインと、各ステーブルコインが持つトリレンマについて、以下から解説していきます。
- USDT(テザー)
- USDC(USDコイン)
- DAI(ダイ)
実際のステーブルコインとトリレンマをチェックしていきましょう。
USDT(テザー)
USDT(テザー)は、もっとも普及しているステーブルコインです。
長らく、主要なステーブルコインとして利用されています。
また、法定通貨やそれに準じる資産で担保を構成しており、法定通貨型のステーブルコインの1つです。
USDTは、テザー社によって発行・管理されているステーブルコインであり、トリレンマにおいては分散性を犠牲にしています。
過去には、NYAG(NYの司法当局)から、準備金の不正で訴えられています。
すでに和解が成立しているものの、トリレンマにおける分散性を犠牲にしたリスクが見えた一例です。
USDC(USDコイン)
USDC(USDコイン)は、USDTについで大規模な時価総額を持っているステーブルコインです。
サークル社によって提供されており、USDTと同様に法定通貨やそれに準じる資産で、担保を保持しているステーブルコインになっています。
USDCについても、USDT同様に分散性を犠牲にしているステーブルコインです。
過去には、シリコンバレー銀行をめぐる一連の騒動の中、サークル社がシリコンバレー銀行に担保を預けていることが判明したことがあります。
これによって、一時的にペッグが崩壊する現象が見られました。
サークル社が直接的に発端となった騒動ではないものの、安定性が高いとされていた法定通貨型のステーブルコインにおける新たなリスクが発覚しました。
DAIDAI(ダイ)
DAIDAI(ダイ)は、Maker DAOというDAOによって管理されているステーブルコインです。
スマートコントラクトを活用して発行・清算といった管理を行っています。
上記のような背景から、これまで分散性が高いステーブルコインとして知られていました。
しかし、近年では変わりつつあります。
というのも、DAIはETHをはじめ、複数の仮想通貨を担保として利用していました。
しかし、担保の安定性などから、徐々にUSDCやRWAを担保として組み込みつつあります。
一時期は、かなりの割合がUSDCで占められていた時期もあり、事実上、USDCをベースに機能していたステーブルコインでもありました。
当然ですが、USDCや関連する資産のリスクは、DAIの潜在的なリスクにもなります。
DAIについては、近年担保周りのトピックが活発で、今後注視が必要です。
ステーブルコインのトリレンマについてまとめ
この記事では、ステーブルコインのトリレンマというトピックからさまざまな点を解説しました。
オンチェーンでさまざまなアクションを行っていると、ステーブルコインは切っても切り離さない重要な資産です。
しかし、各ステーブルコインは固有のリスクを持っており、それが露呈したときペッグ崩壊などを招く可能性があります。
ステーブルコインは安定的な資産として紹介されることが多いですが、各通貨ごとにリスクを持っている資産でもあります。
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